【withコロナ時代のビジネス】空き家活用を通じた地方創生Vol.1-2に続くVol.3です。今回は空き家課題に関して国がどのような計画を立てているのかを整理しつつ、実際の空き家の活用事例をベースにコンテンツ解剖を行います。【withコロナ時代のビジネス】空き家活用を通じた地方創生Vol.1-2は下記のリンク先からお読みください。連載ものなので順番にお読みいただくことをお勧めします。
では、まず地域の抱える課題について簡単に前回の振り返りを行います。地域の抱える課題としてあげられるのは、人口減少、少子高齢化、人口流出、耕作放棄地、空き家、担い手不足などなど様々あります。地域の抱える課題と言っても、これらは単純に地方の地域が抱える問題ではなく、日本全体の大きな課題であります。よって、これらの課題をクリアする、あるいは許容しながら新たな切り口を模索していかなければ日本全体の明るい未来はないに等しいと考えられます。課題は視点を変えればネガティブな要素だけでなく、ポジテイブに捉えることもできます。そして、ポジティブに捉えることができれば、そこには必ず新しいマーケットが生まれ、ビジネスチャンスが眠っているのです。
本題の空き家問題に関しても簡単におさらいします。全国の空き家数は現在800万戸を超えており、過去20年から比較して約1.5倍に増加している。世帯数が2023年に約5400万世帯と推計されており、23年以降世帯数は減少していくと推計されている。対して、住宅ストック数は約6200万戸を超えており、世帯数をしっかりとカバーしている。このままだと2030年を超えた頃には、空き家数は2000万戸を超え、空き家率30%の時代も目前に来ているのである。では、そんな空き家はなぜ空き家のままになってしまうのでしょうか。端的に見ると需要と供給のバランスが崩壊していることが一番の要因です。まだ使えるものがあるのに新しいものを作り、手に入れてしまうのは人間の性なのでしょうか。気がつけば社会問題になっている。というのは空き家問題に限らず共通しているのではないでしょうか。まちに空き家があるとどのような問題が起きるでしょうか。例えば、景観の問題、防犯上の問題、防災上の問題など常時、非常時共に課題を抱えます。一方で、なぜそのような空き家が放置されているのかという部分にも制度上の課題もあり、複雑であるのが不動産領域でもあります。所有者不明の物件をどのように扱うかという議論も近年加速しつつありますが、費用負担などを考えると緊急性の有無なども判断材料とさざるを得ないこととなり、複雑なものなのです。では、私たちはどのような空き家の活用を検討すべきなのでしょうか。それは、前述している少子高齢化、人口減少、人口流出などの課題に対して地域がどのように向かうかによって検討していく必要があります。縮小、クローズを検討している地域で空き家活用ビジネスはなかなか投資すべき対象ではありません。中心市街地へのコンパクト化を見越した先行投資が今は熱いポイントだと考えられます。また、あるいは地域の底地力をアップさせようとしているローカルな地への投資も中期的にはいい事業投資である確率は高いと考えられます。その空き家の価値は、交通の便と商圏エリアの人口と経済規模が教えてくれます。今回は、具体的な物件の活用事例を交えながらどのような課題アプローチができるのか、具体的なコンテンツ内容やビジネスモデルについてみていきましょう。
目次
・空き家問題に対する国の取組み
・空き家活用事例/東京都文京区Rural Coffeeを事例に
・空き家活用ビジネスの今後の展開
・空き家問題に対する国の取組み
空き家問題に対する国の取組みとして国土交通省が発表している「空き家対策の現状について」より、新たな住生活基本計画では3つの視点と8つの目標が定められている。まず、新たな住生活基本計画では3つの視点を以下のように整理されている。①「社会環境の変化の視点」、②「居住者・コミュニティ」の視点、③「住宅ストック・産業」の視点である。コロナ禍を経て、新たなライフスタイルやワークスタイルの概念が普及している中で、それらを後押しする施策の整理は必要不可欠である。今回は3つの視点の中でも、③「住宅ストック・産業」の視点における目標7の「空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進」に着目します。これらは、大きく二つの方向性があり、1つは自治体と地域団体が連携し、空き家の発生抑制、除却等を推進することです。空き家数が全国で800万戸を超え、今後も増加していくと言われる中で自治体だけではその全貌の把握と対応を負うことは難しく、地域の多様なステイクホルダーと連携、議論を進めながら、今後の空き家数をできるだけ抑えることと、危険と判断されるものを積極的に除却していくことが求められている。2つ目は中心市街地等において、空き家・空き地の一体的な活用等による設備等と示されている。【withコロナ時代のビジネス】空き家活用を通じた地方創生Vol.1-2でも整理した人口減少、少子高齢化等の課題を整理した際に、中心市街地の活性化と、ますますのコンパクト化の推進が図られることが望ましいと考えられる中で、活用を検討していくべき対象はある程度の人口規模、経済規模を維持できる可能性の高い中心市街地にあると推測できます。
具体的な内容としては、空き家・空き地バンクを活用し、行政と民間団体が連携し、古民家等の空き家などを改修・DIYを進め、セカンドハウスやシェア型住居、一時滞在施設での居住、サブスクリプション型住居などの、二拠点居住、多拠点居住を進めていく方針が示されている。これは、コロナ禍での地方移住や働き方改革、リモートワークなどの普及が今後ますますの発展を後押ししてくれることとなるだろう。また、コンパクトシティ施策等と一体となった全体計画も求められており、単に空き家を改修、利活用するだけではなく、まち全体を俯瞰してみることによって多様なステイクホルダーと連携しつつ、どの空き家を利活用し、除却し、その跡地をどんな場に設計していくかという全体の数ヵ年の計画が求められてくるとなるだろう。
現在、空き家・空き地バンクは各地方自治体ごとに作られ、運用されているがユーザー視点からみるとまちを跨いだ情報が収集しにくいことや、情報の統制がなされていないことから、数年前から全国版の空き家・空き地バンクの運用が始まっている。公募によって選定された、(株)LIFULL、アットホーム(株)の民間企業2社が空き家・空き地バンクの運用を行なっている。試験運用が平成29年10月からとなっており、令和4年3月末段階での参加自治体は約2倍、物件掲載数は約4.7倍と右肩上がりのプラットフォームとなっている。官民連携でスモールでローカルな空き家情報をプラットフォームにてオープン化させ、マッチング(コネクティッド)していくのはSLOCモデルの日本広域版となっている。
・空き家活用事例/東京都文京区Rural Coffeeを事例に
東京都文京区向丘にある「Rural Coffee(ルーラルコーヒー)」は築75年の空き家物件をリノベーションしてまちに開けたコンテンツを展開している一つの事例である。元々は一階が街中華のお店で二階部分が東京大学の学生の下宿であったという。
現在、ルーラルコーヒーは一階がコーヒースタンド、地方地域のアンテナショップ、まちにひらけたイベントを開催するフリースペースとなっている。二階部分はシェアオフィスとして、現在地域密着型のビジネスを行う地元の企業が4社入居している。2020年3月の開業から約3年間の運営の中でさまざまな活用を行い、現在の形となっている。まちのニーズを引き出し、どんな価値提供を行うのか、そのためにどのようなコンテンツを生み出すのかといったことを様々整理し、企画していく必要がある。これらに関する知見や経験等は後日スモールビジネスに関する連載でご紹介予定です。
・空き家活用ビジネスの今後の展開
空き家活用ビジネスの幕開けは世帯数の減少の始まる2023年から再注目され、再び盛り上がることとなる。現在の800万戸を超える空き家数の中でもまだまだチャンスはあるが、ビジネスは中長期の視点で見ることが重要である。今後空き家率が増えていく中で、これまでの空き家活用とは違った、街単位で見た時の空き家活用の在り方が問われる時代へと突入していく。次回は空き家活用ビジネスのビジネスモデルや今後期待されるコンテンツについて詳しく見ていきたいと思います。
・【CafeSta】ポリスタ #04「空き家活用を通じた地方創生」