5.今後のアンテナショップの形と在り方

1990年代のアンテナショップの設立ブームを経て、このコロナ禍で行政が運営するアンテナショップのあり方が問われる現在、段階的にアンテナショップを縮小、クローズしていくことが望ましい。現在のアンテナショップは案内機能と物販機能などが全て集約されている全集約型であり、コストはかかる他、ノウハウのない自治体にも負担がかかっており、持続的な運営体制ではないままにきている。そのような背景から、民間企業の参入を促し、分散型のアンテナショップを実現させることが求められている。

分散型のアンテナショップを実現させるには、SLOCモデルを確立する必要性がり、既存の民間運営のスモールでローカルな常設の店舗や自治体の施設を中心に、非常設の出展やポップアップを活用する。そして、それらの情報を各々がオープンにしていくことで、繋がりを生み出し、広範囲でのSLOCモデルによるアンテナショップを確立することが地域経済の発展と、持続可能なアンテナショップの運営に求められる。

アンテナショップの大多数が現状、経営的に赤字経営のなかでそこに多額な公費がかけられてきていたこの数十年間の中で、広告宣伝という立ち位置であったと考えられるアンテナショップだが、その効果検証はこれまでに十分になされていない。しかし、一方で民間事業者の中で、民設民営のアンテナショップの出店や、各企業での地方創生を名目とした地域にフォーカスした商品選定、企画などの流れからは今後、行政主導の公設のアンテナショップに多額の費用を捻出しながら運営する必要性に関しては皆無であると考えられる。そういった中で、効果検証を行うことよりも、早く現状の支出を最小限に抑え、新しい時代の新しい流れに公費が投資されることを切に願うものである。効果検証は後世に残すものとして必要であるかと思われるが、そもそもの経営状況が黒字化していない時点で、持続的なものであるとは考えられず、あくまでも中期的なポップアップストアであったという結論が導かれることが予測できる。



今後のアンテナショップが公設の全集約型から行政と民間との連携で各機能を分散させ、分散型へと移行していく中で重要なことはどこがイニシアチブを取るのか。そしてこれまで全集約型のアンテナショップに投じられていた費用をどのように活用していくのかといった点である。これらは行政の全集約型への対応から分散型への対応への移行が重要となってくる。行政は公平性を重視した立ち位置であるため、これらの分散型の仕組みの中でイニシアチブを取り分散化の企画、運営を主導し、予算管理と助成金、補助金の整備などを進める必要があると考える。これまでと異なり、分散型のアンテナショップに関わるステイクホルダーの数は膨れ上がるため、行政が公平な立場からハンドリングする必要性がある。また、助成金、補助金頼りにならない程度に公費の分配を実施する必要がある。

新しいアンテナショップの在り方として分散型を実現する際にSLOCモデルが重要となってくる。このSLOCモデルはスモールかつローカルなスモールビジネス、スモール拠点での官民のアンテナショップの機能、案内機能と物販機能を分散させ、ただ分散させるだけではなく、それぞれの活動や機能をオープンにし、各拠点が強い繋がりを構築することが求められる。これらは、単なるインターネットやSNS上での情報のオープンだけではなく、常設拠点が連携したイベントやフェアの企画などオフラインの繋がりの構築の中で情報をオープンにしていく必要がある。また、オンライン上だけでない連携により実質的なコネクティドの状況を生み出すことへと繋がり、SLOCモデルとしての機能が十分に発揮されることが期待できる。

SLOCモデルに基づく、分散型のアンテナショップの確立で、持続可能な新しいアンテナショップの形が形成されることが期待できる。この新たなアンテナショップの形態は今後、ますます地方地域の経済基盤が心配される中で公費の見直しをはじめとして、地方地域の事業者の成長にも寄与するものとなると考えられる。行政が主導を握る形となるため、時間的なコストはかかるものの、民間の既にある動きを活発化させ、行政の背中を押す形を構築できれば新たな流れへと前進するものであると考えられる。コロナ禍を経て、転換期である日本においてアンテナショップも転換期にきており、新たな流れへと進んでいくことを切に願い、この分散型のアンンテナショップの早期実現を目指し、関係各者へ本論文の内容を提言する。



6.参考文献

今井亮輔(2005)『地方自治体アンテナショップの機能と運営に関する研究』

飯田泰之(2017)『これからの地域再生』晶文社

大嶋淳俊(2019)『東京における地方アンテナショップの情報発信に関する現状と課題』

牛島利明研究会(2014)『アンテナショップから見る地域振興の政策意図』

薄上二郎、松隈久昭、仲本大輔(2009)『地域ブランドの推進と地方自治体によるアンテナショップの課題』

大嶋淳俊(2019)『東京における地方アンテナショップの情報発信に関する現状と課題:大学教育における協力の可能性の検討』

加藤いづみ(2012)『物産振興におけるアンテナショップが果たす役割』

木下仁(2018)『凡人のための地域再生入門』ダイヤモンド社

木下斉(2016)『地方創生大全』東洋経済新報社

木下斉(2016)『実は大赤字?自治体「東京アンテナショップ」』東洋経済オンライン

小島慶蔵(2019)『地方創生でリッチになろう成功する8つの心得』中央経済社

高野誠鮮(2015)『ローマ法王に米を食べさせた男』講談社

田中輝美(2017)『関係人口をつくる』木楽舎

藤原直哉(2020)『SLOCの世界を支えるブロックチェーンと新しい時代のシェアリングエコノミー』

 

・参考資料

一般社団法人地域活性化センター(2020)『2020年度自治体アンテナショップ実態調査』

日本経済新聞(2021)『「東北にシリコンバレーを」復興の立役者が描く未来図』