4.アフターコロナ時代における新たなアンテナショップの形

4-1.分散型の実現に向けて

分散型を実現する前に、既存のアンテナショップの全集約型との比較検討が必要である。全集約型のメリットとデメリットを挙げていくと、メリットとしては現状好立地であることから集客が見込める点、一箇所に機能を集約することにより、あそこに行けば全てが揃うというイメージが定着することが考えられる。2021年10月25日以降、緊急事態宣言が明けた東京都内では人流も活発的になっている。銀座にある山形県のアンテナショップ「おいしい山形プラザ」では、一階が山形の地域産品の販売、二階が山形の郷土料理が楽しめる飲食店と観光案内所となっていた。訪れたのが日曜日ということで、銀座に足を運ぶ人も多く、一階の物販は来店客で溢れかえっていた。しかし、一方で二階の案内所には人は居らず、二階への導線も非常に分かりにくく、案内機能は機能していないと感じ取れるものであった。公益財団法人山形観光物産協会関東支部観光振興担当の栗田氏と公益財団法人山形観光物産協会関東支部山形ファンクラブ担当阿部氏によると「コロナの影響で観光誘致が難しい以上、パンフレットなども新たな観光ものは用意されていない」「イベントなども積極的に実施できていない」などの声があった。行政である以上、このコロナ禍での動きは非常に慎重な姿勢であった。一方で、両担当者は山形県出身の方々で山形愛に溢れる印象であり、案内機能が十分に発揮できた際には期待できる効果も大きいのではないかと考えられた。

また、東京スカイツリーに隣接するソラマチ内に入る栃木県のアンテナショップ「とちまるショップ」は他県と異なり、銀座、日本橋、有楽町などの一等地のテナントではなく一般の商業施設の中にあるものであったが、物販がメインの施設であり、他県のアンテナショップとは毛色が異なるものであった。東京スカイツリーという観光名所に隣接することもあり、集客は他県のアンテナショップとは異なり、観光客がメインになる様子であったが、集客力という面では有効な印象があった。ただ、観光をメインにきた人々に対して地方のPRの有効性には疑問視せざる終えない印象もある。しかし、ソラマチ全体としては墨田区の商業施設という立ち位置であるため、店内の客層としては観光客という様子ではなく、一般の東京都民であると考えられた。

全集約型のメリットとしては、行政主導ということもあり初期費用、ランニングコストともに積極的な投資がなされ好立地に出店できることが大きなメリットであると考えられる。一方で、デメリットとしては常設である以上、この好立地、全集約のコンテンツの機能がバランスよく運営されていない点がデメリットとして挙げられると考える。

そういった中で、分散型のアンテナショップを実現させるには、3つの整理が求められる。1つ目は主体と事業内容を整理すること。2つ目は常設と非常設を整理すること。3つ目はアンテナショップをクローズすることである。

1つ目の主体と事業内容の整理に関しては、主体が自治体と企業の大きく分けて2つであることを整理する必要性がある。これまでのアンテナショップでは、基本的には公設公営、先進的な事例としては公設民営のケースも見られるが、これらはオーナーが行政であるがために、本来の民間企業のノウハウをうまく活かせていない状況にあると考える。業務委託といった形となると裁量にも限りがあり、業務委託費がメインの事業となるため、営利的な活発的な経営は望めないのが事実である。こういった背景の中で、アンテナショップでの自治体のPRに関しては、基本的には自治体が主体となり事業を展開し、地域産品のPRでは企業が主体となることが望ましいと考える。事業内容では自治体では自治体の広報活動と行政窓口としての機能を重視した展開を行い、企業ではノウハウを活用した地域産品の販売と適切な事業者へのフィードバックによりクオリティの向上を行う形が理想であると考える。

2つ目の常設と非常設での整理では、自治体の機能に関しては、都道府県事務所やふるさと回帰センターなどといった、公費が投じられて運営されている既存の常設施設を活用し、企業の機能に関しては、既存の企業の店舗を活用することにより新たな投資の必要性はない。また、自治体がこれまでに行なってきたアンテナショップの機能を完全に民間に移行することは難しいため、必要に応じたポップアップなどに関しては、非常設型の期間限定出店が望ましいと考える。期間を設けて臨時で出展する形を取ることで、集客面での集中はもちろんのこと、アンテナショップを抱えるコストと比較した際にも多額のコストカットを実現することが可能となる。

3つ目のアンテナショップのクローズすることに関しては、機能を分散させたものの既存のアンテナショップを残していては、無駄な経費をかけ続けることとなる。立地面での問題も大きいことから既存のアンテナショップはクローズし、しっかりと分散型で首都圏のネットワークでアンテナショップの機能を維持することが求められると考える。これらの議論は、宮城県知事である村井氏も日本経済新聞の取材に対して「(コロナ禍で)海外に売りに行けない中、ネット通販は有効なツール。地元産品を売り込むには各地にアンテナショップを設けるという方法もあるが、もっとネット通販を有効活用したい。逆にアンテナショップは小さくする、もしくは無くす方向で検討するよう指示している」と述べている。村井氏はアンテナショップをなくし、ネット通販というランニングコストの少ない方法を用いて地域産品の販売を行おうとしており、行政内でもそのような議論を進めているという。こうした流れは、各自治体でもこのコロナ禍を契機に議論が加速するものであると考えられる。自治体の横並びの特徴を考えた際には、どこかの自治体が率先して、行動を起こすことにより後に続く自治体が増えることが期待できるものであると考える。

 

4-2.分散型のメリットとデメリット

分散型を行うことによるメリットは、第一に、コストの削減があげられる。これまでに、アンテナショップを運営するにあたり、多額のランニングコストがかかっていたが概算だけでも年間数千万円単位のコストカットを可能とする。赤字を出して、中には一億円近いコストがかかっている自治体のことを考えると、それらの費用は常設ではなく、非常設に対するコストや、宮城県が進めようとしているネット通販の開発費などに回すことも考えられ、もっとも有効な投資を促すことに繋がる。第二に、目的、機能、主体が適切な設定、体制を整えることにより、本来の地域産品のPRと自治体のPRといった目的を実現させる近道となる。これまでに、全集約型で運営されることにより、民間の本来のリソースやノウハウが発揮されていなかったものが発揮されることに期待できるのである。これらは、地方の事業者の商品開発能力の向上や販路拡大を促進させるものへと繋がり、地域経済の発展としても期待できるものであると考えられる。

しかし、一方で全集約型であったからこそ管理しやすかったといった一面もあり、分散型には以下のデメリットも存在する。分散型により広範囲での管理が難しくなることである。地域産品のPRと自治体のPRといった極めて単純な目的二つに対してでも、行政と複数の民間企業が取り組む際には、方向性の確認は行う必要性がり、定期的な議論を行う場を設ける必要性がある。また、複数の民間企業が参入した際に、自治体がハンドリングしていたから、取り扱えていた商品も、商品選定で漏れてしまう可能性も考えられる。そうした際に、行政がアンテナショップという平等な場を設けるのではなく、仕組みとして民間企業での取り扱いを促進することや、商品のアップデートを促す企画を組んでいく取り組みが求められる。

 

メリット 一箇所に行くだけで商品がなんでも揃う。
一等地での店舗運営が可能。
デメリット 地代家賃をはじめとする運営コストがかさむ。
店舗運営のノウハウを持たない行政が主導なので十分な機能を発揮できていない。

全集約型のメリットとデメリット

 

メリット 店舗運営のノウハウを持った民間が主導なので十分な機能を発揮できると期待できる。
既存の全集約型のアンテナショップと比較して単独の運営コストが大幅に削減できる。
デメリット 既存の全集約型では集約されていた機能が分散されるため、消費者側の移動コストがかかる。
分散型となった際に、誰が全体をハンドリングするのかを明確にしなければならなく、多様なステイクホルダーが関わるため、統括コストがかかる。

分散型のメリットとデメリット

 

4-3.分散型に向けた先行事例
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4-4.愛媛県における官民それぞれの動き
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