3.課題解決案と実現可能性度の仮説

3-1.目的のアップデート

アンテナショップにおける開設目的として挙げられる、「地域の特産品のP R」、「自治体のP R」は全国の自治体の開設目的の上位に入ってくる。次いで、「地域情報発信」、「特産品の販路拡大」、「市場調査・消費者ニーズ」それらは、コロナ禍において見直しが必要となってきていると考える。コロナ禍において、観光、現地開催の移住、起業推進のイベントは中止、オンライン化している。これまで、大きな問題がないとされてきた自治体運営のアンテナショップは、本来、機能していたかどうか測定が難しい中、事業活動が停止した今、課題がクリアになっていると考えられる。

本来、自治体のP Rというものは、地域の情報を発信し、観光客や移住推進を進めていくことに重きを置かれてきたと思うが、コロナ禍においてその目的を果たすことは難しくなっている。そして、コロナ禍においての問題だけではなく、多様な目的を一拠点に集約することは効果の最大化を図るには効率的ではないと考える。アンテナショップの機能を分散させる際に、現在関係するセクターごとに得意な領域を担う形が望ましいと考える。ここでは、「自治体P R」と「地域産品の販売」の大きく二つに分散することを考える。

自治体P Rを目的として事業を実行する主体は行政とする。各都道府県は永田町に都道府県事務所を有しており、ハードな行政機関の機能は集約されている。また、移住などの相談はふるさと回帰センター(東京都千代田区)などのN P O組織が運営しており、これらは常時、通常機能していると考えられる。また、観光、移住に関するフェアは非常設型として、大規模なイベント会場や駅構内、百貨店などで年に数回開催されており、常設のアンテナショップよりも不特定多数の人々にリーチでいていると仮説を立てる。

地域産品の販売を目的として事業を実行する主体は民間企業とする。商品の販売チャンネルを有する民間企業が、自社のノウハウを活かした事業展開をすることは、地域産品の販売を目的として掲げた際に、ノウハウのある主体が目的を持つことが効果を最大限に発揮できると仮説を立てる。

これらは、目的自体の更新を推奨するものではなく、各目的を一拠点のアンテナショップから分散させ、各セクターに振り分けることにより、事業推進と目的の明確化を促すものである。

 

3-2.機能のアップデート

各目的を各セクターに分散した際に、各セクターの機能は以下のように整備、アップデートするものとする。

自治体P Rを目的とした場合、その事業活動の主体は行政ないしはN P Oなどである。これらは、行政の方針に基づく、P R活動を行うが、現状では観光または移住推進などが大きな目的とされている。これらの目的を実行するために常設、非常設の場を活用し、以下の機能を有することが望ましいと考えられる。常設施設である都道府県事務所、ふるさと回帰センターなどでは、ハードな行政機能を有していることを活かした案内機能や営業活動を行う。非常設の催事ごとでは、常設施設ではリーチできない層に対してアプローチすることができる。P Rを目的とした際には、常設で行うよりも、非常設で戦略的に、集中的に予算を投下することが、中長期的にアンテナショップに予算をつけることよりもコストパフォーマンスがいいと考えられる。また、これらは既存の拠点と事業であり、スイッチコストも最小に抑えられると考えられる。

目的の主体を分散させ、各セクターが集中投資を行うことにより、アンテナショップ内では期待できない効果とコストカットが期待できると考えられる。各セクターのカバー範囲での目的設定上では、機能のアップデートに関しても、スイッチコストは最小限に抑えられると考えられる。また、特に自治体に関しては、ノウハウのある領域のみに集中できるため、機能の大幅な向上が期待でいるものであると考えられる。

 

3-3.主体のアップデート

主体のアップデートとしては、機能の向上とともに期待できるものが大きくあると考えられる。

自治体のP Rを目的とする行政はこれまでに抱えていた、雑多な業務とノウハウのない領域を削減することにより、資金面での余白が生まれる他、業務の効率化、最適化が図れるため、自治体P Rに関する施策に集中することができ、主体の質の向上が期待できる。自治体では既に、大規模会場での自治体のPR活動や移住相談ブースなどを設けるなどの活動がされており、これらの活動は非常設型での運営、自治体の都道府県事務所での開催などとされていることから、これらの活動に集中していくことが自治体の目的にあった活動が期待でき、主体としてのノウハウも十分に保有していると考えられる。地域の魅力を発信するといった目的意識をもった行政職員も多数いるだろうが、それをアンテナショップの運営というノウハウとリソースが不足した領域で実現することよりも、主体である行政が持っているノウハウとリソースを活かした発信には非常設の施策がコストパフォーマンスにも優れていると考えられる。

地域産品の販売を目的とする民間企業に関しては、企業が既に持っているノウハウを活かして、地域活性化、地方創生に寄与できるものから、企業のC S R活動として考えられる。営利を目的とする企業が、ノウハウとリソースを最大限に活用することにより、地域産品のPRといった点では、しっかりとした売上も期待できるほか、販路拡大といった視点からは、地域の事業者にとっても大きなメリットがあると考えられる。なんとなく並べられていた商品も、企業が取り組む際にはなんとなく並べることは不可能な話となり、売れるものが強い立ち位置を取り、売れないものは排除される傾向があると考えられる。排除されやすいという一面では、この企業が主体となった際に考えられるデメリットであるとも考えられるが、排除ではなく、事業者への適切なフィードバックを行うことにより、商品のクオリティの向上と事業者の成長にも期待できるものがあると考える。こうした、フィードバックにおいても主体が行政であるとノウハウの有無により説得力を帯びないものも、企業が主体である場合、ノウハウに基づく議論となることが期待できるため、非常に有効なものであることが考えられる。

また、地方地域においてこのようなノウハウを保有している企業は少なく、地方で作られた物を介して企業同士の繋がりができることで、都市と地方の格差の是正にも寄与できる体制が構築されることが期待できる。このような流れを作るためにも、行政主体のアンテナショップを縮小、クローズしていくことで、民間企業が取り組みやすい体制を作ると同時に、参入を促す仕組みを構築することが行政の本来の役割なのではないかと考えられる。

 

3-4.アンテナショップの経営的課題へのアプローチ

アンテナショップの経営的な大きな課題の2点において、1つ目の多額なランニングコストがかかっており、それを各自治体の税金で賄っている課題に関して、ランニングコストの削減を段階を踏んで行うことを提案する。1990年以降の急激なアンテナショップ設置を経て30年余り経過する今、これまでの運営方針を急激に大きく変革することは非常に難しいと考える。これは、行政の前例主義たる体質に基づくものであり、単純な破壊と創造よりも、段階的破壊と段階的創造が求められると考える。また、新たな分散型の体制を整えるにも、行政と民間の足並みを揃えることや社会調整にも時間を要するものであると考える。ランニングコストで一番大きなものは地代家賃であるが、これらを削減するには実質的な撤退をする他に根本的な解決策はないと考えられる。そういった中で、分散型を段階的に進めるためには、既存のアンテナショップの中で民間企業のポップアップやセレクトブースの運営委託を進めていくことが重要である。現在のアンテナショップの商品理解を進めていくほか、都市部の企業と地方の企業の接点づくりを生み出すほか、売上ないしはスペース料金を企業側から徴収することによりスペースの規模感にもよるが坪単位の確実な回収が望めるものであると考えられる。現状の負担を軽減しつつ、分散型へ向けた実証実験を行なっていくことが求められていると考えられる。

2つ目の、多額のコストがかかっているのにも関わらず、目的、機能、主体が適切な設定、体制になっていない課題に関して、分散型のアンテナショップの実現を提案する。

多くのアンテナショップの設立目的が「地域産品のPR」と「自治体のPR」といった中で、高いコストをかけてアンテナショップを全集約型で運用することは目的の達成を阻害している他、公費の適切な運用ではないと考えられる。既存のアンテナショップの縮小とクローズを実現させ、目的の分散、機能の強化、主体の適材適所を実現することによりアンテナショップの本来の目的は達成されるものであると考える。既存の全集約型を官民連携した分散型で広範囲で機能させることが重要であり、行政の都道府県事務所と民間の事業活動で現在の大きな目的である「地域産品のPR」と「自治体のPR」を分散させるべきであると考える。コロナ禍において、実店舗の経営が難しくなり、人流の制限がなされる中、自治体のPRもオンラインイベントの実施を行うなどと工夫もみられる。民間企業においても、生活必需品の食料品店での販売には影響はなく、消費者への新たな選択肢の提案としての地域産品の取り扱いには期待できる。また、企業では通信販売のノウハウもあり、成長領域がコロナ禍で加速している背景からも、新しい技術、仕組みを活かしたPRや販路拡大にも期待できる。