アフターコロナ時代における新たなアンテナショップの形

分散型アンテナショップのSLOCモデル

SLOCビジネスラボ

坪田莉來

Key words:全集約型、分散型、常設、非常設、SLOC

 

目次

論文趣旨

第1章 アンテナショップとは

1.はじめに

2.アンテナショップ(AS)の定義

3.アンテナショップ(A S)の常設・非常設の分類と定義

4.アンテナショップ(A S)の全集約型と分散型の定義

第2章 アンテナショップの課題と現状分析

1.課題背景

2.アンテナショップの開設目的と課題

3.アンテナショップの機能と課題

4.アンテナショップの主体と課題

5.事例

6.アンテナショップの経営的課題

7.三つのアップデート

第3章 課題解決案と実現可能性度の仮説

1.目的のアップデート

2.機能のアップデート

3.主体のアップデート

4.アンテナショップの経営的課題へのアプローチ

第4章 アフターコロナ時代における新たなアンテナショップの形

1.分散型の実現に向けて

2.分散型のメリットとデメリット

3.分散型に向けた先行事例

4.愛媛県における官民それぞれの動き

5.分散型におけるSLOCモデル

第5章 今後のアンテナショップの形と在り方

参考文献

 

要旨

1990年代から続くアンテナショップの開設ブームから30年余り経過した今、未曾有のコロナ禍に置かれた日本において実店舗であるアンテナショップも大きな影響を受けた一つである。しかし、アンテナショップの経営的な問題は開設以降長年に続く課題を抱えており、今回のこのコロナ禍で見直す必要性が求められていると考える。現在、アンテナショップが抱える問題は、以下の通りである。第一に、赤字経営にも関わらず、多額のランニングコストがかかっていること。第二に、目的・機能・主体の適切な設定と体制が整っていないことである。

本論文の結論は以下の通りである。第一に、多額のランニングコストを削減することと同時に本来の達成すべき目的を実現させるために、既存のアンテナショップを段階的な縮小、クローズを行う。そして、全集約型の既存のアンテナショップから複数の主体で分散型のアンテナショップを運営することが求められる。

第二に、分散型のアンテナショップを実現させる際に、藤原(2020)におよるシェアリングエコノミーの特徴であるSLOCモデルを確立することが求められる。多様なステイクホルダーで分散型のプロジェクトを実行するには課題も多くあげられるが、現状のアンテナショップを存続させるメリットと分散型のアンテナショップを実現させることを比較した際に、分散型を実現させるメリットの方が遥かに上回る。

 



1.アンテナショップとは

1-1.はじめに

2020年より新型コロナウイルスの蔓延により、首都圏を中心に地方各地でも混乱の状況が進んでおり、事業者は大きな影響を受けている。本論文の焦点である都道府県のアンテナショップにおいても、今回のコロナ禍において売上の減少、飲食店の営業時間の短縮など大きな影響を受けていることがわかる。著者は、愛媛県内子町の出身であり、首都圏での地元地域のPRや地域産品の販売に関しては状況以来、経営面、運営体制、目的、意義などに対して疑問を抱いている。そして、このコロナ禍においてその疑問に関してしっかりと向き合い、課題の洗い出しと、解決策の提言を行っていきたいと考えた。

コロナ禍において、アンテナショップは地域の情報発信を行った際のゴールが不透明な状況に陥っていることがうかがえる。本来、観光や移住など人に焦点を当てて、観光客数や移住者数などでその成果を図ることもできるだろうが、積極的な施策打ちや人の誘致が難しい中、アンテナショップの存在意義や現状の形態のアップデートを進めていく必要性があると考えられる。

本論文では、既存のアンテナショップを縮小もしくはクローズする方向性を検討しながら、新たな時代の新たなアンテナショップの形を検討していくものとする。その際に、形式的な施策を謳うのではなく、多様なステイクホルダーのベネフィットと持続可能な仕組みづくりを軸として論じていくものとする。

また、本論文では行政、民間を著者の出身地である愛媛県を事例の中心に他県との比較を行いながら展開していくものとする。

 

1-2.アンテナショップ(A S)の定義

アンテナショップの定義に関して、加藤(2012)では、「都道府県もしくは市町村が運営の主体となり、あるいは運営を団体や民間事業者に委託した上で、地方の特産品の販売や飲食の提供、観光・物産をはじめとする地域の情報を発信するための施設であり、設立や運営に当たり地方自治体が何らかの関与、または補助や助成を行っている常設店舗」と定義されている。また、今井(2005)では、「①地方自治体が何らかの形で関わっており、地域振興を目的とした施設であること。②主として自地域以外の人との地域・文化・情報交流や特産品P Rなどのために設置していること。③自地域外の都市部に設置された常設の施設であること」とされている。

地方と都市とを繋ぐ拠点としてのアンテナショップにおいて、運営の主体が地方自治体であり、地域産品の販売や情報の発信、観光の推進などの目的を持った上で、常設であるということが両者の定義に共通している事項である。巨大施設での催事や、駅、商業施設での催事などといった非常設の企画も目的などは非常に類似する箇所が多いが、常設、非常設での違いや、年間にかかる投資コスト、運営スタイル、各ステイクホルダーも異なってくるため、対象を常設のものとするという限定的な縛りを行う必要性がある。

 

1-3.アンテナショップ(A S)の常設・非常設の分類と定義

従来のアンテナショップの定義として挙げられる、運営の主体が地方自治体であり、地域産品の販売や情報の発信、観光の推進などの目的を持った上で、常設であるということを基本軸として捉える。アンテナショップの開設目的そのものは従来の目的である、「地域の特産品のP R」、「自治体のP R」、「地域情報発信」、「特産品の販路拡大」、「市場調査・消費者ニーズ」などのこれらをコストのかかる常設に集約するのではなく、常設と非常設に分散させることにより、圧倒的なコストカットと目的に対する効果の最大化を図れると仮設する。

常設では、対面でのコミュニケーション、案内、説明など、実際に地域に訪れることや、地域へのU I Jターンを促進することを重視するため、物販機能ではなく、主に案内機能を備えた都道府県の案内窓口など決まった場所で、決まった職員が常駐する施設であり、その主体は行政であると定義する。具体的には、自治体が入る都道府県会館、または、移住センターなどが挙げられる。

非常設では、戦略的な地域情報の発信や地域産品の販売を目的とした、都道府県が主となり開催、参加する催事ごとや、民間のお店でのポップアップストア、企画ブースなど、期間が限られており、また、その実行主体は行政に限らないものと定義する。具体的には、ビッグサイトなどの大型施設で行われる各自治体共同開催の催事ごとや、駅構内、百貨店などで開催されるフェア、民間のアンテナショップや都道府県のポップアップブースなどが挙げられる。

また、常設・非常設へ機能を分散するプランを「分散型」と定義する。対称に全アンテナショップを一箇所に集約するものを「全集約型」とする。本論文では分散型の提言を前提とし、全集約型の可能性を模索しつつ、比較し論述していくものとする。

 

常設/非常設 運営主体 ケース
常設 行政 都道府県事務所、(アンテナショップ)、ふるさと回帰支援センター
民間(運営委託) 各愛媛県民間設立ショップ
非常設 行政 移住フェア、地域PRフェア etc.
民間(運営委託含む) 各愛媛県民間主催の企画etc.

常設・非常設の事例整理(著者作成)

 

愛媛県において、通常の行政主導のアンテナショップの他に、都道府県事務所やふるさと回帰センターなどといった行政の常設の施設が存在するほか、民間が運営する常設店舗も充実している。そういった背景に加えて、非常設のイベントやポップアップストアなども整理した際に対象のケースは存在し、現在の常設の縮小や非常設への移行、分散は大いに検討ができるものであると考えられる。

ウィズコロナ、アフターコロナ時代において、非常設型の積極導入に機能の分散、コストカットを推進することにより、新しい時代のアンテナショップの形が、包括的に形成されることが期待できる。

 

1-4. アンテナショップ(A S)の全集約型と分散型の定義

既存のアンテナショップには自治体による地域のPRや地域の産品を販売する物販、あるいは飲食店などの機能が備わっている。一箇所の常設拠点にあらゆる機能が集約されているのである。これを本論文では「全集約型」と考える。

それに対して、常設の全集約型のアンテナショップの機能を多様なステイクホルダーで分業し、一箇所ではなく、さまざまな拠点に分散させて機能させていくことを「分散型」と定義をする。

現在の自治体のアンテナショップの形態は常設の全集約型であり、本論文では、常設と非常設の両立と、その核を分散させていく方向を検討していく。

 

分類 分類
全集約型 常設 従来の自治体が運営するアンテナショップ

など

分散型 常設 民間が運営する既存のアンテナショップ、

セレクトショップなど

非常設 期間限定の物産展、ショップ内でのポップアップストアなど

全集約型と分散型の整理(著者整理)